☆ わくわく働くひとを応援する産業医のブログ ☆

わくわく働く社会を創る。そう決めて起業しました。社内ヘルスケアだけでなく人事総務の領域全般、医療や病院管理とお話しましょう。

【前半】もし娘がリスカをしていたら・・・どう対応する?

今日は、心療内科や精神科でも非常に多い、自分を傷つけるような行為をしてしまうひとのわたしの”一時的な”成功パターンを紹介します。

 

あくまでも医師という立場で、クリニックの現場で行っていますので、注意して下さい。ただ簡単な方法なので、実際自分でやってしまった方や友人でいたら「やめられる」きっかけになれれば嬉しいです。

 

 

【Question】

もし親として娘がリスカしたことを知ったらどう対応しますか?

A. カッターを取り上げ、話を聞いた上で、二度としないように約束する

B. 話を聞いた上で、したくなった時の対処法を教え、したくなったらしてよいよと言う

 

みなさまは、どちらを選びますか?

 

 

若い女性の15.7%が自傷行為の経験がある!意外と多い。

みなさんの周りには、自傷行為をしているひとはいないのか、それとも気が付かないか、気が付かないように行動されているのか、わかりませんが、かなりのひとがその経験をしています。

 

日本でもいくつか発表されていますが、自治医科大学の公衆衛生の先生方が2012年に発表したデータによれば、全体の7.1%に少なくとも1回以上の自傷行為の経験があり、16-29歳では、9.9%となっています。特に同世代の女性では、15.7%です。

 

 

リスカって何だ?注目を浴びたいだけでしょ?の間違い。

リストカットリスカ)は、英語で「Deliberate self-harm syndrome」と言います。この「Deliberate」という「故意に自傷行為」をするというと本質を間違えるかもしれません。

 

彼らは、「故意に」やっているのではなく、「気がついたら」もしくは「どうしようもない」、「やらないと気がすまない」といった感覚で、多くは衝動的にやっています。

 

自傷行為を誤った認識でいる医師も多くいます。

特に救急現場では、このようなリスカの患者を多くみるのですが、「リスカをすることで見せびらかしている」であったり、「注目をあびたいんだ」という間違った認識で対応する場合があります。

 

リスカは、ポッカリと心に穴が空いた人格形成上未熟なひとが、社会で自分が経験したどうして良いのかわからない感情を解消するための手段なのです。

 

自傷行為は、リスカだけでなく、拒食症や過食症という形であったり、不特定多数の異性と性交渉をもったり、お薬を大量に飲む大量服薬という形でもあり得ます。

 

 

リスカは悪いこと?本人がやっているんだからほっとけばよいんじゃない?

リスカやその他の自傷行為は、ワルイことなのでしょうか?

本人がやっているんだし、繰り返し今までもやめろって言ったんだけどやめないから仕方ないよね。というコメントは、繰り返し面倒なことに巻き込まれた周囲の妥当な意見です。

 

しかし、自傷行為を繰り返しているひとは、自殺の成功率が高くなると言われています。周囲からの理解が得られないため、頻回になったり、より過激になってきます。

女性であれば、傷が残ってしまうことも多くあります。

 

自傷行為に依存する感情のコントロールの方法が、自殺の成功率が高くなることを考えれば、良くないことと言えます。

 

 

リスカは病気?病気っちゃあ病気だよね?でもやめられないしね。

リスカをやってしまう診断名に多いのが、「パーソナリティ障害」というものがあります。さまざまなタイプのものがありますが、基本的には「愛着障害」と「虚無感」から「感情のコントロール」ができない未熟なひとになります。

 

非常に良い子だったり、とてもキレイな子だったり、アーティスティックに長けた人であったり、もちろん芸能人にもいるでしょう。

親との関係をうまく構築できず、親からの「愛」を理解できずに育ってしまった場合は、アメリカで多いのは、性的虐待という育児環境からひととどうやって関係性を構築すればよいのかわからないというものになります。

 

さらにずーっと穴がポッカリと心に空いている状態ですから、慢性的に自殺願望もあり、いつ死んでもよいです!という方も多いです。

 

これは病気でしょうか?

非常に難しいところです。リスカを1回だけやってみたというだけであれば、大丈夫でしょう。でも繰り返し、やめたいのにやめられないという状況であれば、病気として考えて対処法や治療を受けるべきです。

 

 

やめられないでしょ?リスカ。びっくりしてやめろ!って言ったよ。

自傷行為をしたことのないひとが、リスカを見た時、驚愕するとともに親であれば、それを止めさせるために怒るでしょう。友人であれば、絶句するかもしれません。

そりゃあそうですよね。カッターで皮膚を切るという感覚は想定外ですものね。痛々しいですし。

 

やめられないでしょ?って良く聞かれます。正しくありません。

 

パーソナリティ障害は、10代・20代が非常に感情の起伏が激しく、30代・40代・50代になるにつれて非常に安定してきます。

さきほどの「未熟」な人格が、社会の波にもまれて「成熟」していくのです。

 

従って中長期的には、リスカ自傷行為は、確実に減っていくものなのです。

明日の【後半】で「一時的な対応方法」について説明して、「娘がリスカしたら同対応するのか」完結しましょう。

 

では楽しい、充実した土曜日を〜!