☆ わくわく働くひとを応援する産業医のブログ ☆

わくわく働く社会を創る。そう決めて起業しました。社内ヘルスケアだけでなく人事総務の領域全般、医療や病院管理とお話しましょう。

上司を動かすのが「部下」の役割

おはようございます!

今日は公休日なので、久しぶりに土曜日が休日です。花粉ホントに酷いですが、みなさまも大丈夫ですか?

 

今日は、わたしの産業医面談事例を紹介します。テーマは、「上司を動かすのが部下の役割」です。上司と親は選べない…これホントにそうですよね。でもこれだけで終わらせてはダメなんです!

 

上司と親が選べないのであれば、部下は上司をどうやって動かすのか、子どもは親をどうやって動かすのかを考えるべきなのです。今日はそんな話をします。

 

 

 

入社後3年目のある社員

わたしが、この社員と話をすることになった経緯から話ししましょう。個人や会社が同定されないために、年齢や性別、業種などは架空ですが、ストーリーは全く同じです。

 

人事からある社員を見てほしいと言われました。入社して3年経つのだが、すこぶる上司からの評判が悪く、仕事で使いものにならないということでした。部署も人事もどうしてよいのかわからず、疾病性も含めてみて欲しいという依頼でした。

 

・25歳男性、製造メーカーで品質管理の業務

・何をやらせてもミスが多く、同じミスを繰り返し、言われたことをやらない、話を聞いていない

・入社後3年が経過しても、社員に仕事を任せることができない状況

・本人もやる気が消失して、自信をなくしている

 

こんな部下いますよね?

みなさまだとどのようなアプローチでこの社員に働いてもらいますか?

今回は、産業医という立場で実際にわたしが行って着実に成果に結びついている事例を紹介します。

 

 

 

本人と話をしてわかったこと

産業医面談では、必ず「今」の状況を評価します。つまり働き続けることで健康を害する可能性があるのであれば、就業制限や休業ということが望ましいと意見をするわけです。

 

今回のケースでは、幸いにも本人は軽度気分や意欲が下がっているものの就業を制限する必要はないレベルでした。しかし、このまま放置にすると明らかに会社でほされて、辞めていくパターンでもありました。

 

本人と話をしてわかったことは、

・昔から忘れ物が多い

・KYというより気を遣うことが多い

・仕事の順序を守れない

・思ったことを口にしてしまう

 

といったことを自分で客観的に理解しており、発達障害などの情報を自ら悩んで新卒後2年目に知っていたようです。

 

そうなんです。

彼は、ADHDの傾向(癖)があるんです。ADHDは、「多動性」・「衝動性」・「不注意性」の3つを特徴にしたものです。

 

もちろんこの方の伝記を読んだら、完全に強いADHDの癖がありますよね。

 

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おそらくわたしも同じようにADHDの癖があると思っています。なんてたって好奇心旺盛でひとの話の途中で割り込んだり、ケアレスミスが昔から多かったものですからwww

 

 

 

彼は悩んで悩んで諦めていた

3年間の中で彼は悩んで悩んで、出した答えが「諦める」ことでした。どうせオレなんて…というものです。非常に意欲が低下していて、これがさらに仕事上での評価を下げていました。

 

彼はどうやって働けば良いのかわからなかっただけなのです。自分の特徴からどのような働き方が最適なのかがわからなかった。だから結果も出ない、上司から理解されないとなるわけです。

 

 

 

このような働き方が向くはず。

初回産業医面談でわたしは彼がすることとして5つ指示しました。

1.上司へありのままを伝えること

2.抽象的なものが苦手なので、具体化すること

3.上司の立場になって考える事

4.ルーチン作業でのミスをカウントすること

5.仕事の振返りをすること

 

正直、このようにアドバイスをしても「やってくれるひと」と「やらないひと」にわかれるため、期待していませんでした。

 

最初は、上司へ自分の弱点を話するようで嫌がっていましたが、「上司の立場になって考えればおのずとありのままの自分を話することができるはず」という言葉に納得したようです。

 

 

 

上司を動かして自分なりの働き方を模索できた

その後2ヶ月が経過し、再度面談した際に彼から出てきた言葉にびっくり。

彼:「先生、最初は上司に話をするのは嫌だったんです。恥ずかしかったです。でも伝えました。」

 

私:「どんなことを伝えたの?」

 

彼:「この3年間を振り返ってケアレスミスが多かったこと、注意が散漫になってしまうこと、でも具体的に可視化をして順番を決めれば仕事はこなせることを伝えました。」

 

私:「凄いじゃん!なかなか自分の弱いところを伝えるのは大変だよね!?偉い!」

 

彼:「ホントは嫌だったんです。でも確かに上司の立場になってみれば、部下がどんな状況で働いているのかわからないと不信になるでしょうし、知ったほうが上司への負担も減ると考えたんです!」

 

私:「そうだよね〜。その通り!んで、それだけ伝えたの?」

 

彼:「いや、実は今配属されている部署が、非常に属人的なところだったので、自分の勉強を兼ねて誰が配属されてもわかるようなマニュアル作成させてくださいって上司に頼みました。そしたらもちろんOKされて。上司も話してくれてありがとうって言ってくれました。」

 

私:「(絶句…こいつやるな〜。確かに前回の面談で、単に伝えるだけだったら上司からすれば、んで?ってなるよねって言ったわ。)やるじゃん!」

 

というような会話だったんです。

 

 

 

上司を動かすのが部下の役割

彼は彼なりに自分を客観的に見ることができ、可視化する作業を毎日行い、具体的な行動にブレイクダウンすることで、今まで出来なかった働き方ができているのです。上司が上手に部下をマネジメントしないといけないといった強迫観念の要素は根強くありますが、同時に「部下」も自分でできることをやらないといけません。

 

多くの場合、それは「上司を動かす」ことです。

自分の状況を伝え、理解や共感してもらう作業は部下にとって不可欠です。だって上司と親は選べないのですから。

 

 

ちなみに彼は、この2ヶ月のミスは21回だそうです。毎日の仕事を振り返って記録しているため、このようなコメントができているのです。

 

 

いかがでしたか?

自分のことのように思うひともいれば、このような部下をもつひともいるでしょう。諦めたらダメです。各自が自分の強みと弱みを認識しながら「働き方」を模索しなければなりません。

 

今日も1日充実した日を送りましょう〜!!!